トタン屋根。

久しぶりにちょっと遠くへ。一般的にはうらぶれている、と言われるようなところで、街はくすんでいて、昭和のままに時間が止まったようなところなのだが、なんだか今の自分には優しく感じる。なにもかもうまくいかなくなってひとりぼっちになってしまうようなことがあれば、この街に越してこようか、なんて思いも湧き上がってくる。


人生は過酷で、時に救いようのないようなことも起こる。だけれども、人それぞれに等しく、この世に生きることには意味があって、そこには尊さがあるのだと思う。そのモノサシは今はずいぶん金銭的価値に寄っていってしまっているけれども、それだけでは測れないものが本当はたくさんある。金銭のためだけに生きるのが人生ではないのもまた真である。


そんな、いろんな人生に触れてみることこそが、この世に生まれてきたことの醍醐味で、僕がめいっぱい経験してみたいことだ。人生が順調に進むことが良いことなのは確かだが、思い通りに進まないときに、どういう気持ちを携えて歩き続けられるか。建ち並ぶトタン屋根と、そのなかで繰り広げられる悲喜こもごもの人生模様を眺めながらそんなことを思う。