かけがえのない。

年度末になるとなぜかスイッチが入ったようにモノの片付けをしたくなる。1年の間目を通すことのなかった資料、袖を通すことのなかった服、などを綺麗さっぱりと捨てていく。


古いものが光もあてられずに保存されているのは良いことではない。収納スペースがスッキリとすると、空間に風が流れ出したように感じられる。人間、そんなにたくさんのものを抱えて生きられるわけでもないのだ。


自分自身、記憶力も年々悪くなっているようで、どんどん昔のことを忘れていく。完全に忘れてしまっては困ることもあるから、多少はメモやノートはアーカイブしておくけれども、そうするようになってから今までよりも忘れてしまうことに抵抗感がなくなった。必要なときに情報を取り出すことができるなら、後生大事に脳のメモリを食っておく必要もないのだ。


たくさんのモノや記憶を手放したからといって自分にはなにも残らないわけではない。ヒトが日々摂取した食べもので身体がかたちづくられるように、体験や経験で精神もつくられる。それだけは、何人たりとも奪い取ることができないものでもある。