甘い場所、甘い話。

うっかり夕方にコーヒーを飲んでしまったら、その日の夜はほとんど眠れなかった。うっすらと意識が途切れて、気づいたら窓の外が白みはじめていた。もう立春を越えているのだ。少しずつ日が長くなる。


東京駅の近くのホテルのラウンジで話をしていた。周りはアフタヌーンティーを楽しむ女性ばかりで、場違いなおじさんたちが2組だけ、隅のほうのテーブルに押しやられていた。可愛く載せられたいちごの赤が遠目にも映えて、甘い匂いが漂ってくる。


シビアな話を突きつける。言っているこちらも覚悟を決めている。真正面から正対していると、息が詰まりそうなので、窓の外に目をやる。冬の空はどこまでも青く、少しずつ日が傾いてそこに黄色みが混じってくる。


最後になって、「どうにか他にいい方法がないですかね」といった言葉を投げつけられる。残念ながら、現実を見なければ前に進むことはできない。甘い話はないし、甘く見えそうな話はきまって後からしっぺ返しを喰らう。


どうにか、生き抜いてもらいたい。素直な人だからこそ、現実から目を逸らさないで、立ち向かってもらいたい。それは等しく自分にも向けられている言葉でもある。