音楽。

久しぶりに子どものピアノに付き添う。まだはじめて数ヶ月なのに、ずいぶんと上手になっていて、もう僕は同じように弾けないかもしれない。どんどんスポンジのように新しいことを吸収していくんだなあ、と思う。


音楽とは不思議なもので、その字面の通り、「音を楽し」まないと上達しない。ただ譜面の通りに音を出してもそれは無機質な音のカタマリであって、楽しそうに、ときには悲しそうに、さみしそうに、気持ちを指にのせて音を出すと、メロディはいきいきと意思をもち得てくるのである。それが「表現」というものなのだよ、と先生は言っていた。


表現といえばやっぱり僕にとっては中学高校の音楽の先生のことは記憶に残る。厳しい授業で中学入学したての頃は面喰らったけれども、音楽を通じて自分を表現することを誰よりも教わった。特に音楽に興味が深いわけでもない僕ですらそう感じるのだから、あの先生はとてつもなくたくさんの教え子たちに影響を与えたことだろう。改めて、尊い仕事だなと感じる。


どこまでピアノを続けてくれるかわからないけど、音楽が豊かな人生を送るためのひとつの支えになってくれるといい。