ふと本棚の古い本を手に取ってパラパラとめくる。昔バックパックを担いで東南アジアをふらふらしていた頃によく読んでいた下川裕治の本である。いまとは隔世の感もあり、懐かしさを覚えながら読んでいた。そうして、裏表紙に目をやると黄色い「よみがえる」と印された100円の値札。
この名称は通っていた大学の近くにある古本屋のものだ。そしてどうやらこの店は僕が大学を卒業してから数年経って閉店したようだ。
値札をまじまじと眺めると、あの日あの店でこの本を手にとって、同じように値札を眺めていた過日の自分が思い出されるようでむず痒い。おそらく店の名前は、古本が新しい持ち主の手に渡ることをなぞらえて名付けられたものなのだろうが、いまここにきて別の意味で記憶がよみがえる。
おそらく僕の本棚によみがえるの値札が貼られた古本はあと何冊か残ったいて、何年かごとに気がつくたびに、淡い記憶が呼び起こされるのだろう。