受け取る。

親しい人から、その半生をまとめた手記を読ませてもらった。前にその話を聞かせてもらっていたのである程度は予想していたのだが、想像通りに苛酷な人生を彼が、そして彼の一族が送ってきたことがよくわかった。

読ませてもらってもうまく感想が浮かばない。言葉が出てこない。人の人生に対して感想を持ったり、意見を口に出すということそのものが違和感のあることなのではあるが、その通り、ただただ受け取ることしかできないものである。

人の人生も、ある意味では他の動物と同じようなものなのかもしれない。ふとしたはずみで踏みつぶされて命を失う虫のように、短期間で肥育されて出荷されて屠殺される牛や豚のように、儚く命を落としてしまう生きものなのだろう。今の時代の僕らの人生は、その命にちょっと意味が付けられただけのものである。

それでも、精いっぱい前を見て、少しでも人生が良くなるように努力し続けることに、意味はあるのだと思う。