腕一本。

もう10年くらい付き合いのある不動産屋さんと飲む。彼は長らく会社勤めをしていたのだが、働いても働いても搾取されていく構図に嫌気がさして、去年独立をしたのだ。そしてさらに死にものぐるいで働いた結果、初年度から立派な売上を上げた。


税理士からアドバイスを受けて慌ててクルマを買ったり、保険に入ったり、カメラを買ったりと、せっせと経費を計上することに力を入れているようだ。稼いだら稼いだでまた大変な世界が待っているのだなあと思う。飲み食いにも、風俗関連にも興味がなく、独り者の彼が無理やりおカネを使いにいくというのもなんとも難しいものだ。そうこうしているうちに、彼の価値観も変わって、家族などを持つようになるのかもしれない。


とはいえ、学歴も職歴もない彼が、その粘り強さをもって、腕一本でこれだけ稼げるというのは、この社会も捨てたもんじゃない、努力すれば成り上がれるメカニズムがまだ生きているんだと思わされる。ぼくも少しでも彼のような執念を持って仕事ができればいいのだが。