牛込神楽坂。

年の瀬、普段は足を向けることのない牛込神楽坂に行く。気のいい小料理屋に入って、気心の知れた人と食事をする。

東京にはもう10年以上いるが、この街を訪れるのは初めてだ。都心に近い場所でありながら、生活感もあり、のんびりとした時間が流れておりなんだか大阪のわが実家のあるエリアのようだ。

例のごとく今年を振り返りながら食事をする。店内には小料理屋にしては珍しく子ども連れもいる。よく食事をする銀座界隈や、北新地とは雰囲気が違う。その違和感をある意味では楽しみながら、一品一品を味わう。

シメに鯛めしを頼んだのだが、けっこうお腹いっぱいになったので包んでもらう。満喫して店を出る。板前さんが店の前まで出てきて、火打ち石を使って切り火をしてくれた。

お腹も心も満足して、タクシーに乗り込む。ひざの上から、鯛めしの温かさが伝わってくる。1日なんにもいいことはなかったけれど、こうして1日を締めくくることができるだけで、ニッコリとできる。きっと来年はいいことがある、と信じられる。