オーシャンゼリゼ。

出張先からの帰り、閑散とした駅の改札を通り抜けると、ホームから「オーシャンゼリゼ」のオルゴールの音色が聴こえてきた。

『いつも なにか 素敵な ことが あなたを待つよシャンゼリゼ

メロディーの余韻を頭のなかに残して、クロスシートに身体を預けると、昔見た映画のシーンが甦ってきた。確かあの映画も、車窓風景ごしにオーシャンゼリゼのメロディーが流れていた。

確かあの映画を観たのは、都内のミニシアターだったように思う。仕事を終えてから、のっそりと地下鉄に乗って移動して、人もまばらなシアターの席に収まった。とりたてて面白い映画でもなかったのだが、エンディングであの歌が流れていたことだけが妙に記憶に残っている。

いままさに帰路につこうとしている出張も、とりたてて面白いものでもなかったなあと思い返す。自分のなかで興味は湧くのだけども、100%どっぷりと浸かるわけでもなく、どこか客観的で、傍観者のように対応している自分がいる。

間延びした時間のなかで、オーシャンゼリゼがまだ頭の中を流れている。面白くはないけれど、幸せといえば幸せな時間なのかもしれない。