オクトパス。

新大阪駅のお土産店で、「オクトパス」の置き物を見かけた。文字通りタコの置き物で、「置くとパス」とかけた受験の御守りである。

「置くとパス」を初めて耳にしたのは忘れもしない、17歳の夏、友だちと大阪から夜行バスに乗って大学のオープンキャンパスを訪れた時のことだ。自由で楽しそうな先輩たちの雰囲気に一気に惹かれた。なかでも、漫談よろしくまくし立てていた1人の先輩が、受験生に向けたメッセージの最後に捨て台詞として残していった「置くとパス」の言葉がなぜか印象に残って、確かその日の夕方に東京でタコの置物を買って帰った記憶がある。

それからというもの、受験勉強のかたわら、「置くとパス」「置くとパス、、、」とつぶやいてはその置物を机の上に押し付けていた。振り返ってみればほとんどマインドコントロールのようなものだ。

その甲斐あってか、希望通りに合格、入学して、卒業して、あっという間に倍の年齢、34歳の今に至る。そして今また「オクトパス」を目にしたのはなんの因果だろうか。なんにせよ、あの頃からここまで、時間は繋がっていることだけは確かだ。