人工島。

金融機関からの紹介を受けて、23区のはずれの工場へ行く。京急の駅前からバスに揺られること30分超、普通の街に見えて、工場だけが建ち並ぶエリアである。朝のラッシュ時間帯を過ぎていたが、バスは勤めに向かう人で混んでいる。

日常のなかに非日常感が交じる光景はワクワクする。付近には店のような場所もない。食事はどこで摂るのだろうか、と思っていたら、都内でよく見る弁当屋のトラックが目の前を走っていった。少し歩くと、一軒だけコンビニが営業していた。

ごう音が聴こえてきて、頭上を飛行機が飛び立っていく。離陸態勢から、そのまま旋回に入るまでの動きがよく見える。なるほどこんな場所では人はなかなか住めないはずだ。ごう音に抗うかのように、溶接の音が聴こえてくる。

アポイントを終えて、帰りのバスに少し時間があるので、海沿いに出てみる。だだっ広い砂浜の向こうに、いくつもの人工島が浮かんでいる。どこまでいっても現実感がない。

やってきたバスに乗り込んで、もときた駅にまで戻って、ようやく普段の感覚に戻った。旅行に行ったわけでもないのに、遠くに旅行に出向いて帰ってきたような、不思議な時間だった。