土壁のトンネル。

5日ぶりに降り立った大阪には、大粒の雨が降り続けていた。傘をさして歩くが、アスファルトからのはね返りでスラックスがぐっしょりと濡れて脚に張り付く。いまさらながらタクシーを使わなかったことを後悔する。

時間には余裕をもっていたので、目的の会社には待ち合わせの20分前に着く。降り続く雨を避けようと、隣を通っていた線路の下をくぐるトンネルに入る。背の高い人ならば頭がつかえてしまうような高さで、幅はバイクがようやく一台通ることのできるような小さな小さなトンネルだ。ひと息ついてメールの返信と、折り返しの電話を済ませる。

この雨のなか、Tシャツをビショビショに濡らした小学生たちが自転車で嬌声をあげながらトンネルをくぐっていく。それ以外には人っ子1人通らない静かなトンネル。大阪の下町の昼下がり。タイムスリップしていくような錯覚にとらわれる。

この町のどこかに、小さい頃の自分がいるような気がしてならない。そして自分のなかにも。そのことを認識してから、傘をさしてアポイントの先へと歩き出す。