マモノ。

昨日も息子が昼寝している間にふらっと高校野球を観戦していたが、ものすごい試合を見てしまった。第三試合、東邦が一時7点あった差を詰め、9回ウラに5点を集めて大逆転サヨナラ勝ちをしでかしたのだ。甲子園にはやはりマモノが棲んでいるとしか言いようのない展開で、テレビを通じても球場が異様な雰囲気に包まれていることがありありと感じられた。

7,8回と小刻みに追い上げムードができていたが、一気に雰囲気が変わったのはやはり9回ウラに入ってからだ。球場全体が自然発生した手拍子に包まれた。その手拍子に背中を押されるかのように先頭打者が安打を放つと、場内に大きな歓声が上がった。この雰囲気に動揺するなと言うのは難しいだろう。

なんとか2アウトまで取ったところでは、やはり届かないかとも思ったが、そこからは面白いように安打が続いた。最後は見ているほうも訳がわからないままに、サヨナラの走者が本塁を駆け抜けた。敗れた光星学院としては、なにがなんだか分からなかっただろう。

人間、場の雰囲気に飲まれず冷静にふるまうべき、ということは何度も言われてきたことであるが、これほどの雰囲気のなかで普段通りの力を出すのはどう考えても難しい。勝負は時として残酷すぎる。