追憶の間に。

中1日での関西出張。当初予定を組んだ時には、「身体にこたえるかなぁ」と心配していたものの、思いの外元気にスケジュールを消化することができた。どこかで疲れが出なければよいが。

久しぶりの和歌山へ、新大阪からくろしおに乗っていく。小さい頃、実家の近くで1番姿を見た特急列車がくろしおだった。最寄り駅を通過するその車両は、時とともに新しいものに置き換われていったが、憧れの目で見る対象であることに変わりはなかった。

夏空の下を列車は走り、あっという間に山間部に入る。県境のトンネルを抜けると、紀ノ川に沿って切り開かれた平野が広がる。仕事をするのがもったいないくらいの、絵になる光景。下り勾配に入った列車はにわかにスピードを上げて、和歌山の街に滑り込んでいく。

炎天下の街なかで汗をかきかき巡る。時間の流れが止まったようなアーケードに入って、つんと流れる濃い抹茶の匂いに懐かしさを感じながら、汗が引くのを待つ。真っ昼間、現実と記憶のあいだを行ったり来たりして、気が遠くなるような感覚になる。