かげ。

春は気分が沈んでしまうことが多い。それは、進学や就職といったこれまでの節目を必ずしも晴れやかな気持ちで迎えなかったことや、震災のようなネガティヴイベントがしばしばこの季節に起こることに原因がある。

ただ、振り返ってみると、気分が沈んでいる時イコール人生が停滞している時というわけでもなかったりもするのが面白いところだ。もちろんそんな時に過ごす日々は楽しいものではないのだが、逆に浮ついた気持ちや変に肩に力が入ることがなく、淡々と真摯に目の前のことをひとつひとつやっていこうという気になるので、むしろそんな時のほうが人生前に進めていたりする。驕った態度になって不用意に人を傷つけることもない。

地面に映った自分の影(陰)があるから、自分の立ち位置がわかって、冷静に行動できるのだと思う。どんなときも、自分のなかにある陰の部分、人間としての闇の部分を大切にしておきたい。僕にとって春は、普段以上にそんな部分の存在を大きく感じる季節である。