真冬の夜。
寒い日は、大学2年生の頃を思い出す。つくばは内陸部に立地するだけあって、真冬の夜には軽く氷点下を下回る。自分のパソコンも持っていなかったあの頃、レポート作成だかで夜中にパソコン室にこもり、眠くなったところで切り上げて家に戻る道すがらの寒かったことを思い出す。暖房が効いていたパソコン室から外に出ると、吐く息は1メートルくらい先まで白く煙り、やがて身体の周りを覆っていた暖気が剥がされると、冷気が身を刺すように染み込んでくる。震えながら冷たくなった脚を回転させて自転車を漕いで家路を急ぐ。
その頃は留学生宿舎に住んでいた。宿舎は氷の張った池の側にある。セントラルヒーティングが効いている部屋に入ると、冷えた身体がまた急激に温められて、身体がかゆくなってくるのだ。
なんでもない冬の帰り道のことだけれども、今でも鮮明に思い出せる。案外、死ぬ時まで抱えていくような思い出は、節目のイベントではなくて、こんななんでもない人生の1ページなのかもしれない。