金融機関の多様性と競争力の源泉。

日本にはさまざまな形態の金融機関がある。都市銀行、中央系の金融法人(DBJ商工中金、政策公庫など)、地方銀行第二地方銀行、信用金庫、信用組合などなど。金融機関にこれほどの多様性があるのは日本くらいではないだろうか。これは利用者側にとってもメリットのあることであり、この国の中小企業の強さを支えている一因であることは間違いない。

金融機関の格としての序列は、大まかに言えば先に挙げた順番、ということになるだろうが、この序列は一概に適用できるものではない。地方銀行が総体として都市銀行を上回ることはほとんどあり得ないが、同じ県内に地方銀行第二地方銀行が1つずつあり、第二地方銀行の方が規模も収益性も大きくなっているようなケースはある(地方銀行第二地方銀行の違いについてはここでは割愛する)。また、信用金庫が大きな力を持っている県もいくつかある。特に京都府は信用金庫が県内トップに近い規模を誇り、金融機関としての格も高い、というケースもある。信用組合にしても、どうしても規模は小さくなるものの、経営方針などが高く評価され、お手本のように言われている広島市信用組合など、小粒でもキラリと光る金融機関があったりもする。当然、中で働いている人にしても、信用金庫や信用組合の人に優秀な人が少なくない。

そういう姿を見るにつけ、規模や収益性、格といった要素は全て中の人の能力をどれだけ引き出すか、ということであり、中の人の能力を引き出すような経営の舵取りをトップが行うことができているか、に左右されるのだ、と思う。優秀な組織においては中の人の能力をうまく発揮させるシステムが機能しているのだ。金融の世界に入ったばかりの人の能力にはほとんど差はないが、その後の成長環境の差によって、能力の開発度合いには大きな差がつく。

中の人の能力を引き出している金融機関は自ずと業績が良くなり、中の人に支払う給与も増やせるようになっていく。それができない金融機関は給与の伸びも鈍い。能力の引き出し方にはいろいろある(中には無理やり引っ張り出させることで中の人を疲弊させ潰してしまうこともあるのだが。。)。その結果として、能力の開発度合い、生産性に大きな差がつき、それがやがて収入の差に現れてくる。(一部に一定の制限はあるが、)金融機関の形態にかかわらず、努力と工夫しだいで、他の金融機関に差をつけることができる。その差はゆうに2倍以上を超えることもある。規制産業と言われている割には、相応の競争環境が保たれており、その結果としての格差もあるのがこの国の金融機関の特性だと思う。