阪神百貨店スナックパーク。

出張で大阪梅田をぶらついている時に、阪神百貨店のフードテリアが3月末で営業終了という掲示を見つけ、ええっと驚いてしまった。よく見ると、フードテリアというのは百貨店地下2階の、百貨店のレストラン街とフードコートの合いの子のようなエリアを指すのだ。ここが無くなってしまうのもそれはそれで寂しいのだが、阪神百貨店でも最もソウルフルなエリアであるスナックパークはまだまだ残るようで一安心、なのである。

阪神百貨店のスナックパークは、最近よく見かける商業施設のフードコートよりもさらに狭くカオスなエリアである。そこに、ちょぼ焼き、いか焼き、お好み焼き、たこ焼き、カレー、ラーメン、551蓬莱、御座候(いわゆる大判焼き)、ミックスジューススタンドといった大阪を代表するB級グルメのスター達が勢ぞろいしている。さらになぜか讃岐きしめん、オムライスの店とマクドことマクドナルドもある。立ち食い用のカウンターがあり、みながそこで立ちながら食べているという、およそ百貨店らしくない光景が広がっているのだ。当然のごとく値段も安い、いか焼きやジュースは100円台前半、カレーやオムライスやうどんも200円〜300円台。他地方から大阪に来た人を案内するのにぴったりな場所である。

そして僕にとっても思い出の場所である。子どもの頃、洋服を買う場所としての選択肢は百貨店しかなかった。専門店も少なく、なにかを買うとなると百貨店、しかもわが家は百貨店のなかでも比較的リーズナブルな阪神百貨店であった。そうやって目当ての買い物を終えると必ず、地下1階のスナックパークに下りてきて、軽食をつまんだり、ジュースを飲んだり、お土産に御座候を買って帰ったりするのである。まだバブルの余韻の空気が残った、古き良き時代だったのだろう。

久しぶりに足を踏み入れてみたスナックパークは、あいも変わらず昭和の空気が流れていた。たこ焼きなどは有名店が入るようになったが、ほとんどの店は20年以上同じ顔ぶれで営業を続けており、値段もほとんど変わっていない。変わっていないことにちょっとした感動すら覚えるレベルである。

このスナックパークに限らず、時代の流れに左右されず続いているものが大阪には本当に多くて、それは大阪に生まれた者としては嬉しい限りだ。だからこそ大阪は東京に引き離されたと言われるのだとは思うが、変わらないことの価値が見直される時代も、もうすぐそこまでやってきているように思う。