こんにちは、さようなら。

風邪を引いた。

朝起きるとのどに痛みがあった。部屋がほこりっぽかったのだろうくらいに思って、しかしながら念のためマスクをして家を出た。寒い日の朝にマスクをしていると、吐息がマスクの上部から漏れでて眼鏡が曇る。曇りがひどくなると交差点で信号の色が見えないほどになり、眼鏡を外して信号を確認することになる。これはどうにも恥ずかしい。

会社に着くと顔が熱くなっていることに気付く。よっぽど朝の冷え込みがきつかったのだろうと思って、せこせこと仕事に取り掛かる。3月という期末もあと3週間(先週の時点では)なのだ。きょう自分の手が止まればその分後々に負担が重くのしかかってくる。やれるだけは進めておかなければならない。栄養を取れば体調も落ち着くだろう、と家から持参したおにぎりを早めに取り出し、会社に着く手前に買ったカップ豚汁を作り、作業を進めながらほおばり流し込む。

ところが体調は良くならず、これはある程度で切り上げて休養を取るのが先々を考えるとベターだろう、という考えが徐々に頭のなかを支配するようになる。周りにも自分の調子がいつもと違うことを伝えておいたうえで、どうしても行かなければならないアポイントにだけ顔を出して、そこから直帰することにする。

早めに会社を出ると、空が青い。その日は震災からの節目の日だった。今大災害が起こったら果たして自宅にたどり着けるだろうか、という妙な想像をしながら、強く吹く風に震えて歩く。早めについた先方のロビーで座って目を閉じながら節目の時刻を迎えた。

先方とのアポイントは思いのほか話が盛り上がった。行く前はキャンセルさせてもらおうかという考えもチラついたが、きょう無理して行く価値のあるタイムリーな話もあった。話をしている間には風邪のことも忘れていたし、先方にも体調が悪そうなところは伝わらなかったのはひとまず良かった。そうしてほうほうのていで電車に乗り、ふらふらと自転車にまたがって自宅を目指す。公園では子ども達やママ友達がまだ遊んでいる時間だ。

駅からの道のりを、普段の1.5倍くらいの時間をかけてようやく帰宅すると、すぐに着替えて家にある湯たんぽを2つとも熱湯で満タンにしてベッドに潜り込む。湯たんぽは触れられないくらいに熱いのだが、冷えた身体はなかなか温まらない。この体調の悪さは、体温を上げて免疫力を高めようとしているものの、周りの気温が低く身体が対応しきれていなかったものによるものなのか。血流の多いところに湯たんぽを挟み、寝ころびながら白湯をちびちび飲んでいるうちに、ようやくじっくり体温が上がってきた。体温は38〜39度くらいに上がっている発熱している状態なのだが、なぜか帰宅前と比べると楽に感じる。免疫力が高まって身体のなかで風邪の原因菌に打ち勝っている状態なのだな、と自認しながら、ネット閲覧もできる状態になってきた。

やがて汗がどっと出てくる。汗が出れば出るほど身体が楽になっていく。そのうちに眠ってしまい、汗だくで朝目覚めたら、9割方は回復していた。次の日も、夕方にまた少し怪しい感じになったが、早めに帰って同じことを繰り返して、完全に風邪は去っていった。