心が十分足る理由(るーと)!
今週は4日しか働いていないのだがことさら長く感じられた。仕事のリズムが悪く反省しきり。週半ばはなかなかブログを書く気になれず。
★★★
ふと『まじかるタルるーとくん』のことを思い出したことがきっかけで、芋づる式に江川達也の作品の記憶が甦ってきた。そして、江川達也のマンガが僕自身の価値観に大きな影響を及ぼしていたことに初めて気付き、自分でも驚いた。
江川達也の作品は、彼自身の妄想が具現化されたものと言っても過言ではない。エロいところ、心理描写、主人公の努力する姿、そのディテールに至るまで、彼のこだわりが吹き込まれている。そしてそれらは普段は論理的に積み上げられていながらも、時々全てをご破算にするような破壊行為が行われる。そんな彼の作風と僕の性格はもともと相性が良かったのか、それとも彼の作品に触れた時期がちょうど自分にとって多感な時期にあたったのか、真相は自分でもよくわからないが、多大なる影響を受けたのは間違いない。
彼の代表作と言えばやはり『タルるーとくん』と『東京大学物語』になる。『タルるーとくん』については、ドラえもんのアンチテーゼとして生まれた作品であるということが、『東京大学物語』内にて明かされている。タルるーと、というネーミング自体が、『タルムード(足るを知る)』という仏教用語を由来としていることが、作品の最終巻にて説明されている。それぞれの主人公である野比のび太と江戸城本丸を比較しても、本丸は便利な道具(タルるーとの魔法)に頼らず、自分の努力で困難を乗り越える姿が描かれている。
タルるーとくんの最終巻では、名前の由来と共に、タルるーとがいなくなった後、中学生になった本丸の姿が描かれている。上級生にいじめられボコボコにされるが、タルるーとを呼び戻そうともせず、なおかつやり返そうともせずに耐え、解決しようとする。この、一見、ジャンプ掲載マンガの王道パターンからは違和感のある本丸の姿こそが、江川達也が『足るを知る』精神とともに伝えたかったメッセージではなかったのだろうかと思っている。やられたらやり返す、というのが勝つための唯一の方法ではないのだ、というメッセージである。
ただ、この最終巻のエピソードにしても、結局のところドラえもん7巻のいったんの最終回となったエピソードと酷似しているのである。江川達也自身も後にそのことを認めている。アンチテーゼとしての対抗意識を持ち、それなりにその意識を作品にメッセージとして込めながらも、最後の詰めに若干の甘さが残る。そんな尻切れとんぼなところも、彼と自分はよく似ているように思う(もちろんそのレベルは全然違うが)。