地方の時代。

Webで、北海道の歌登というなんの変哲もない道北の町がタイからの観光客で盛り上がっているという記事を読んだ。主たる観光スポットを持たないにもかかわらず、ホテルで催される餅つきやら寿司握り体験やら流しそうめんやらたこ焼き屋といった、ベタなイベントが大好評とのことだ。最近都内でも目に見えて海外からの観光客が増えていることを感じる。もとより多い欧米や中韓の人たちに加えて、東南アジアから遊びにきているであろう人たちの姿も見るようになった。円安進行により割安感が出ていることもそうだが、アジア全体の所得水準が上昇してきているのだ。

日本の地方には元気がない、というセリフは耳にタコができるくらい聞いてきたが、これからは案外そうでもないんじゃないか、と冗談でなく思うようになってきた。むしろやりようにやっては世界のなかでもかなり恵まれたエリアになるのではないかと考えている。

エネルギーと食料が自給できるという要因が大きい。賛否両論はあるが、あちこちでメガソーラーの建設が進んでいる。太陽光発電に限らず、他の再生エネルギーの開発もこれからさらに行われることになる。将来的に化石燃料の調達に依存する度合いは相当減らせるはずだ。食料についても、地方の自給率は軒並み100%を超えるところが多い。農業分野での改善(個人的には補助金農政は日本の農業を弱らせるだけだったように考えている)が進めば、農産物や畜産物の輸出品としての潜在力が発揮されるだろう。少なくとも、地方は人口が減少していく一方なのだから、エネルギーにしても食料にしても足りなくて困るということはない。足りないのは資源でなくて、それらを活用する人材である。

さらに円安が進めば、低人件費を強みにした企業誘致が現実味を帯びてくる。月収1000ドル台前半で、付加価値の高い生産ができるようになれば、台湾や中国沿海部から製造業が拠点を移してくることになるし、東南アジアとも伍するようになる。人件費の差が縮まれば、安定したインフラ環境が大きなアドバンテージになる。

もちろん、観光客の受け入れも伸びる余地が充分にある。白馬やニセコといったスキーリゾートや前述の歌登のように、局地的に人気を博する観光地がこれからも発掘され、増えていくだろう。ここでも、地方のすみずみにまで整備された空港や高速道が怪我の功名としてプラスに働く。

どこでもこのように上手くいくとは限らないが、成功事例はこれからも確実に増えていくはずだ。工夫を怠らず自立を模索した地方が花開く時代がやってくる。