雇用の風景。

この間、スーパーで商品の取り替えをお願いしたところ、サービスカウンターで10分ほど待つことになった。手持ち無沙汰にしていたところカウンターの上に当日のシフト表が置かれていたので、機密情報と知りながらも興味深く拝見させて頂いた。当日の天気から目標客数、客単価、レジのシフト、鮮魚惣菜コーナーのシフト等々がA3縦長の紙面に細かく記載されている。スーパーに限らず小売や外食業界ではこういう表が毎日作られていることは知っていたが、アルバイトも含めてこういう業界で働いたり、経営サイドから首を突っ込んだりしたこともなかったので、こういう表を見るのは新鮮な体験であった。客1人あたりのレジ処理時間を縮めること、惣菜や鮮魚のロスを極小化させるための読み、BtoCの業界はまさにこうした日々の商いの積み重ねが数字を作っていくのだということを感じた。頭ではそういうものだとなんとなく分かっていても、その場に立たなければ実感できないことはたくさんある。そしてその現場は大多数のパート従業員によって支えられているのだ。コストパフォーマンスが異常に高い日本のBtoC業界は、オペレーションもさることながら、現場のパート従業員のコストパフォーマンスの高さの賜物である。

★★★

違う業界に目を向ける。電機メーカーの苦境がここのところよく言われている。経営判断のミスも当然あるが、そもそも企業としてのランニングコストが、海外のライバル勢と比べて格段に高いという要因も大きい。同じ土俵で戦っていればコスト面で太刀打ちできず、利益率に差が出るのも当然のことである。グループ全体で何十万人といる従業員を食わせるだけの利益を毎年生み出すだけの、海外勢と差別化できるビジネスを育てなければならない。月並みな表現だが、これは本当に大変なことだと思う。企業の規模をいったん拡大すれば、その規模を維持するために走り続ければならないのだ。企業にも社会貢献が求められる世の中になったが、そもそも多くの雇用を生み出している、という一点において企業は既に充分な社会貢献を果たしているはずだ。従業員を増やすことによって、機会損失を減らし収益機会を捕捉するメリットと、マーケットの状態がよくない時にも給与を支払い続ければならないデメリットを比較してもなお、従業員を増やすという判断を選ぶ(しかも日本で)ことは、もっと称賛されてもいいことだと思う。

違う業界を違う切り口から論じただけなので、なんの参考にもならないけれど、経営と雇用、最近少し興味が出てきた。