食べログに載らないレストラン。

友人に連れられて、地元のフィリピンレストランに入った。その店は駅からも、駅前から伸びる商店街でもなく、駅から少し離れた住宅街にあった。壁の一方にソファと低いテーブル、もう一方にバーカウンター。ソファには既に何人かが座って、酒を飲んだりおかずをつまんだりしながらカラオケを歌っている。フィリピンの人も、地元民らしき人もいる。「フィリピンパブ?」と聞くと、「違う違うフィリピンレストラン」と念を押される。

外食の際、店に行く前に食べログで予習をする癖がついたのはいつからだろうか。きょうび小さな街の食堂ですら食べログに掲載されている。口コミで味付けを想像し、アップされたメニューの写真を見て、価格帯と食べたいものに目星を付け、内装写真で店内の雰囲気を掴む。もちろん人を連れていくような時はこうした予習が不可欠だし、逆に誰かに連れて行ってもらう時にも予習しておくと何かと間違いがない。1人や家族で食べにいく時にも、店に入って失敗だった、という可能性を少なくしたいのでついつい下調べをしてしまう。挙げ句の果てに、街を歩いていてふらっと通りがかった店に入る時も、店の前で食べログを開いてしまうこともある。おかげでと言うべきか、店に入ってから後悔するようなことがほとんど無くなった。

しかしながら、食べログで予習してから現地に行って食事をするのは、なんだか答え合わせをしているような気分になるものだ。そういったこともあって、だんだん勝手知ったる店にしか足が向かなくなっていた。予習して行くのもつまらないし、かといって予習なしで飛び込んで行くのも尻込みしていた。なんと言うか、ジレンマの一種と言うか、進化の袋小路か。

そんなことで、(勝手知ったる友人に連れられてであるが)一見客として全く情報のない店のドアを押すのは久しぶりに新鮮な体験だった。もちろんこの店は食べログには掲載されていない。微妙にフィリピン風に味つけされた料理が並んでおり、好きなだけ皿に取る。案外と言っては失礼だが美味い。酒を飲みながら、店員なのか客なのかよくわからないおばさんが喋りかけてくる。そしてカラオケ。変な日本語で歌う日本のポップス、タガログ語のラブソング。しまいにはフロアに出て身体を寄せ合って皆で踊り出す。気が付いたら入店して6時間以上が過ぎていた。

情報なしで、自分の直感に従って店のドアを押してずんずん入ってみる。そんなことを今年はもうちょっと増やしてみようと思う。