レ・ミゼラブル。

この週末にレミゼラブルを見た、という話をしたいのだが、その前に少し話は脱線する。

★★★

僕の通った高校には、秋も深まると音祭という行事がある。クラス単位や、有志で合唱や演奏を発表し合うのだ。音楽指導に定評のある教師がいたこともあり、高校生のくせに一丁前にミュージカルから曲を拾ってきてアレンジをして歌ったりもする。特筆すべきなのはセンター試験を間近に控えた3年生が1番熱が入っていて、たった1クラスだけが獲得することができるグランプリを巡る盛り上がりはものすごいことになる。特に僕が高2だった時は、行事の運営のところからどっぷりと関わっていたことあって、ひとつ上の代が歌っていた姿が今でも深く記憶に残っている。そこにレミゼラブルの曲がいくつか入っていたのだ。上級生の躍動するように歌う姿を見て、歌詞の意味もわからぬまま僕はいたく感動した。

そんなバックグラウンドを携えたうえで、今回映像作品として初めて見たので、偏った見方にならざるを得ない。聞いたことのあるメロディが流れるたびに、あの頃の合唱風景がオーバーラップしてきた。歌詞の意味や歌われた場面の背景も全く知らずに、ただメロディと意味のないフレーズだけを口ずさんでいたところに、ストーリーが与えられ、登場人物の動きと表情が付け加えられた。(恥を承知で告白すると、作品を代表する曲であるDo You Hear The People Sing? が革命の場面で歌われた唄だということすら映画を見て初めて知ったのだ‼)

さて、そんな偏りを認識しつつ、映画自体の感想を。

★★★

158分という尺を全く感じさせないくらい、あっという間に物語が進んで気付いたらエンドロールが流れていた。

基本的にミュージカルの感覚をそのまま映画に落としこんでいるので、話の展開が強引だったり、ご都合主義がいささか過ぎるのは否めない。しかしながらそれらのほころびが気にならないほどに、話の展開それ自体が強いパワーを持っているし、普通の映画ならば不自然に見えるような、キャストの気持ちの乗り移った(まさにミュージカルらしい)演技も受け入れることができる。古典と言われる名作だからこそ可能な、ミュージカルをそのまま映画に落とし込んだからこそ可能な、真に唯一無二の作品なのだなと思わされた。

そして、主人公であるジャン・バルジャンよりはむしろ、悲しい末路をたどった、ファンティーヌ、エポニーヌ、散っていったABCのメンバーとカヴローシュ、そしてジャベール警部。彼らの生きざまこそが、主人公以上にこの作品の主題を体現していたように思う。まさに邦題の「ああ無情」という言葉が胸に沁みる。