駆け込み退職した公務員に拍手を贈りたい。

時事ネタが続くけれども、公務員の駆け込み退職についてどうしても思うことがあったので。

2月以降退職する公務員の退職金が削減されることで、1月末をもって前倒しで退職する公務員が相次いでいるそうだ。埼玉県では定年を迎える教員の10人に1人が3月末を待たずに退職を選ぶということで、臨時教員の手配などで現場は苦慮しているとのこと。警察官など他府県でも駆け込み退職による影響が少なからず出ているようだ。

このニュースを聞いて、経済合理性の観点からもなんの問題もないし、1月末を退職金削減の境目とした制度設計のミス以外の何物でもないと感じたのだが、世間はそうでもないようだ。埼玉県知事は自己の制度設計ミスを恥じるどころか退職者が想定の3倍出たと嘆き、駆け込み退職者を非難した。最後の2ヶ月を見捨てられた子どもたちが可哀想だとも。ニュースなどでも、教師という立場なのに最後の最後で放り出すのは無責任だという声が多くてびっくりした。

埼玉県教員の場合、2ヶ月早く退職することで70万円ほど手取り収入が増えるそうだ。逆に言うと10人のうち9人の教員がカネよりも最後まで働き尽くすことを選んだわけだ。民間企業で同じことをすれば、10人のうち9
人が同じ選択をするだろうか。公務員には、教員にはそこまでの矜恃が求められるのだろうか。国や埼玉県は退職金削減の境目を1月末にしても、ほとんどの教員が途中で仕事を投げ出すことなどないだろう、とタカをくくってわざと制度設計したのだろうか。

タチの悪い制度設計だと思う。さらに予想よりも退職者が増えたからといって非難をする。是非はともかくとして、公務員は世間からそう見られているということなのだろう。今のうちからこの流れを作っておくことで、今後国家や市町村の財政状況がさらに厳しくなった場合、公務員の待遇がどんどん落ち込んでいくことは間違いない。そして教員には良心や矜恃といった都合のいい言葉を投げ続けるのだろう。

政治家や市民が公務員に対してそのように向き合うのならば、公務員は、教員はこれからどうなっていくだろう。僕自身の肌感覚では公務員が人気の職業であるとは到底思えない。得られる報酬と背負わされる重荷のバランスが崩れ始めてきているのではないか。

駆け込み退職をした公務員の方たちの決断に僕は拍手を贈りたい。良心や矜恃に乗っかってデタラメな制度運用には正々堂々と立ち向かえばよい。カネよりも君たちと過ごす時間を選んだんだと言う教員もいてもいいし、早期退職を選んだ理由を生徒たちに話す教員もいてもいい。どちらがいいなんて外野が言うこと自体が間違っている。