将棋世界5月号を読んだ。
- 出版社/メーカー: マイナビ
- 発売日: 2012/04/03
- メディア: 雑誌
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5月号には、3月に行われた各クラスの順位戦最終局の模様が収録されている。めいめいの棋士人生を賭けた戦いの姿が、観戦記者の筆によって克明に描かれている。そして、念願のA級昇級を決めた棋士や、破竹の勢いで上のクラスへの昇級を決めた若手棋士達、そんな若手のなかで10年を越える長く苦しい道のりを経て昇級を勝ち取ったベテラン棋士による喜びの手記が、今号には詰まっている。
勝者の姿が描かれる一方で、敗者の姿が記事になることはあまりない。将棋世界の原稿を執筆している記者の取材は年々質量ともに充実しているが、残念ながら降級してしまった棋士の心境に迫ることは難しい。僕たちは、敗者に最大限の配慮をしながら、言葉少なに描かれるその行間から、彼らの気持ちを推し量るしかない。
ふつう、将棋の棋力と年齢には緩やかな逆相関の関係がみられる。非常に厳しい奨励会という世界を抜け、年齢制限の26歳までに晴れて四段昇段することのできた若手プロ棋士の実力は、150人前後いるプロ棋士全体のなかでは中堅か、中堅よりも少し上に位置することが多い。たいていの棋士の棋力は、20代後半から30代をピークとして緩やかに下降していく。それはけして実力が落ちていくわけではないのだが、棋士全体の平均的な成長のペースから遅れてしまうようになるということだ。誰もが成長し続けることを求められる世界で、40代になって成長する気持ちが切れてしまった棋士も出てくる。若手時代に好成績を残し一時代を築いた棋士が、ある時をきっかけに負けが込むことは珍しくない。一方で、70歳を過ぎてかなり下のクラスに落ちても、若手と切磋琢磨して好勝負を繰り広げる名人経験のある棋士もいる。40代に入ってから好成績を残すようになり、中年の星のような存在になる棋士もいる。