たんけん ぼくのまち。

町を探検するのは僕の密かな趣味である。くまなく走り回って、全貌を掴んだ町の数がひとつ増えるごとに、少し心が満たされる。

川崎に移り住んで、せっかくロードバイクも手に入れたので、少しずつ市内を走り始めている。走れば走るほどバラエティ豊かな町だと感じる。

地形的には川崎という町は東急田園都市線を境に大きく二つに分けられる。田園都市線から南側はほぼ平坦である。鶴見川多摩川という二つの流れに挟まれた平べったい土地に、東京湾にいたるまで大小いろんな工場が立ち並んでいる。東京都大田区に負けないくらい、川崎市南部も製造業が集積していて、しかも多摩川を渡った分だけ昔から土地も取得し易かったのか、大手企業の大工場も多い。道を走っていても、休日にもかかわらずいろんな色の作業服を着た人たちとすれ違う。工場地帯のなかに昔からの長屋や戸建てが建ち並ぶ。道もぐちゃぐちゃしていて、大阪市内の下町と雰囲気が似ている。昼間からなにしてるのかわからないおっさんがうろついているのを見かける。

川崎駅前だけはガラッと様相が変わる。マンションと巨大なショッピングモールのラゾーナ川崎がそびえ立つ。しかしながら駅南側の商業施設や商店街、シネコンは垢抜けない空気が漂ってなんとも川崎らしい。武蔵小杉駅前もマンションが競うように建っているが、おひざ元の商店はローカルムード満載。

かわって、田園都市線周辺および北側はうねうねとした丘がひたすら続く(南武線沿いに限っては平坦で、南部と同じ雰囲気)。〜丘や〜台のつく地名の何と多いことか。1970年代までこのあたりは見渡す限りの丘と森だった(田園都市線自体、溝の口より西に伸びたのは70年以降)。もしタイムスリップできるものならば美しい森の景色を見てみたい、と思う。そこに張り付くように戸建てが並んでいる。駅前には必ずといっていいほど、複数の学習塾が並んでいる。ロードサイドのレストランは充実しているが、パチンコ屋をあまり見かけない。日が沈むと町は静けさに包まれる。

南部と北部がここまでまるっきり違うとは思わなかった。つい数年前までは川崎といわれても何のイメージも湧かず、個性のなさそうな町がだらだらと連なっているのだろうと思っていたが、実のところはいろんな側面を持つ有機的な町がつながっていたのだ。だから町歩きは面白い!