One More Thing.

きょう明日と東北出張。紅葉にはまだ早いが緑が美しい。17時を過ぎると青葉城の向こうに陽が沈む。山と海に挟まれた仙台の街を紅く染めてゆく。

★★★

出張の日、移動の時間が長くなるときやアポイントに入るときには、僕はiPhoneの電源を切っている。心もとないバッテリーの消耗を防ぐためである。電源を入れるときに、漆黒のモニターに白い林檎のマークがぼうっと浮かび上がる。

最先端の医療技術(おそらくジョブズが受けていたであろう)をもってしても、人間は「死ぬ」ことから逃れることはできない。今手にしている技術も快楽も、人間の摂理からすれば吹き飛ぶような存在に過ぎない。アップルがどれだけ凄いのか、ガジェットに疎い僕にはほんの少ししか想像できていないのだろうけど、ここ10年、神がかったようにアップルが快進撃を続けてきたのは、ジョブスが死期を悟り、残された時間で成し遂げたいことに真摯に取り組んだことの賜物である、とすら思えてしまう。

彼の言葉をひとつ載せておく。
『自分が近く死ぬだろうという意識が、人生における大きな選択を促す最も重要な要因となっている。外部のあらゆる見方、あらゆるプライド、あらゆる恐怖や困惑もしくは失敗など、ほとんどすべてのことが死の前では消え失せ、真に大切なものだけが残ることになる。やがて死ぬと考えることが、自分が何かを失うという考えにとらわれるのを避ける最善の方法だ。自分の心に従わない理由はない』

ひるがえって自分を省みると、日々なんと小さな不安にこだわっているのか、と思わされる。本当になすべきこと(もしくはそれを見つけること)から目をつぶっている。時間を無為に過ごしている。


アップルのガジェットは最初は不思議な操作感とあいまってとっつきにくい(僕自身の根本的なセンスのなさもあるが)。そう思いながら使っているうちに、いつのまにか自分の感覚にぴったり吸い付いてくるような使い心地になってくる。そして自分の感覚を携えたままでいろいろなところへと誘ってくれる。これは「便利」という言葉では表しようのない経験だと思う。

ジョブスが生み出したガジェットを携えて、僕らが未来になにを生み出すのかと、ジョブスに問われているのだと思いたい。