希望の源泉。

昨日から関西出張。なんだかんだ言って今年も月一回以上関西に来ている。夕立が降ったりもするけど、蒸し暑い空気に包まれている。今朝は蝉の啼く声で自然と目が覚めた。関東では久しく蝉の啼く声を聞いていない。出勤途中に公園のそばを自転車で通る。公園の木々にとまっているであろうセミが一斉に啼き、シャワーのように音が降りかかってくる。大阪ではクマゼミばかりでほとんどミンミンゼミの声を聞くことはなくなった。田舎に行くとミンミンゼミが啼いていることのほうが多いように感じる。

午前中から昼過ぎにかけて海沿いの町で取引を終えて、昼からはバスに乗って兵庫県の内陸へ向かう。かなり地理には強いと自負もあるのだが、今まで聞いたことのない町に行く。いちおう「市」を名乗ってはいるが、山が入り組んだなかにちょこんとメインの集落があり、そこだけイオンがあったりバスターミナルがあったりと少し中心部っぽくなっている。日本にもまだ行っていないところがたくさんあるのだなぁとしみじみ思う。このあたりの山々というのは、西は山口県からずっと連なる中国山地の西の端に位置するのだろう。高原のようななだらかな山が幾重にも重なっている。中国山地の山というのはどこもなだらかで女性的な山が多い。

仕事を終えてバスに乗ると、きょうも冷たい風が吹いて夕立が降ってくる。走り出す学生やおばあちゃんの姿、東南アジアの風景をそこに重ねる。やがて雨はやんで、湿気をたっぷりと含んだ水蒸気が地表から湧き上がってくる。

最近以前よりも表情が曇ってしまうようなことが多くて、気分も沈みがちなのだけど、自然や日常の営みに触れると、知らず知らずのうちに気力が湧いてくる。幸いにして出張が多いので、元気を補給できている。けっこう僕はお金には細かいけれども、やっぱり報酬とは別のエンジンがないければ、仕事や日々生きることに取り組むためのモチベーションが湧いてこないのだと感じる。

表情が曇ってしまうようなものごとのひとつとして、今朝伊良部秀輝さんが自殺したというニュースを聞いた。清原と力と力の真っ向勝負を演じ、マリンのマウンドで躍動した剛速球投手は、自分の人生にも早々と幕を下ろしてしまった。野球を辞め、思うような次のキャリアを見出せず、自分の役割を見失ってしまったのではないかと思う。彼は根っからの野球(やんちゃ)小僧で、とにかくどんな小さな場所でもよいから野球を続けたかったのだと思う。人間は報酬とは別のエンジンで生きる動物だ、とつくづく思う。