旅行代理店とエンパワーメント。

楽天トラベルの躍進が止まらない。旅行業界内の昨年12月の取扱額を業者別に見ると、楽天トラベルが国内旅行取扱額で、近畿日本ツーリスト日本旅行を抜いてJTBに次ぐ2位に躍進した。今年に入ってからは震災の影響からか、直前に予約を取って旅行に行く人が以前と比べてもかなり増加しているというから、楽天トラベルのシェアはこれまでにもまして増大していることは間違いないだろう。細かくは述べないが近畿日本ツーリスト日本旅行は財務的にもかなり問題が生じているように見える。ドラスティックに業態を転換していけばまだまだ再生の余地はあるのかもしれないが、かなり崖っぷちにあると言える。既存の業界が崩壊していく時でも、トップ企業にその影響が生じはじめるには少しのタイムラグがあると言われるが、JTBにも遅かれ早かれこの波は襲ってくるだろう。


メジャーな海外の観光地に行くとよく見かける客引き。ただ単に誘うだけでなく、日本人のサクラコメントが書かれたノートを見せてくれたりと、いろいろな小ワザを駆使してくれたりもするのだが、ここのところ急速に姿を消しているようだ。小さな店であってもWebサイトを持つようになり、旅行者はほぼ満足に旅行先の情報を得ることができる。もともと客引きというのは情報の非対称性のすきまに成り立っている商いであるので、お店とお客を直接結ぶツールが生まれ、その信頼性がこれまたWeb上のクチコミサイト等で担保されるようになった以上、客引きという商いは消えていく宿命にあったのであろう。お店の側にとっても、客引きで(半ば騙すような)形で一見客を呼び込むために客引きにコミッションをはらうよりも、別な形で資金を投下してプロモーションをするほうが合理的だ、と考えるところが増えてきているのだと思う。


楽天トラベルのビジネスモデルにおいて素晴らしいのは、お客だけでなくお店側(ホテル・旅館)のエンパワーメントに力を割いているところだ。やっていることは客引きの延長線上にあることなのだろうが、Webというツールが誰にとってもフェアなサービスの提供につながっている。ここに日本特有のきめ細やかなサービスが加わることで、楽天トラベルのサービスは世界の旅行業界を制圧しかねないレベルに達していると言える。かつてネット旅行代理店もまたお店側の体力を奪い、経営環境を悪化させると言われていたが、実際のところはどうなのだろうか。楽天トラベルは充分にその殻を破りつつあるように見える。